ホームレスな御曹司…!?
───グビッ、グビッ


「ぷはぁ~!生、もう1つッ」


「ちょっと知香、いい加減やめなよぉ」


「何ッ!?あたしが今この状況で飲んじゃいけない理由って、ある!?」


「もうっ!八つ当たりもヤケ酒もそこそこにしてよッ。タチ悪いなぁ」


「うっ…うっ…。だってさぁ…入社1年で会社倒産だなんて…。苦労して就活して、やっと決まった仕事だったのに…。お茶くみだって、コピーだって、最近になってやっと入れてもらえたプロジェクトにだって、残業続きでもすっっっごい力入れて頑張ってたのに…っ!今日ぐらい、ってか、今日こそ飲ませてよッ!」


「…はぁー」


溜め息をついて冷やしトマトをつつく美大時代からの親友、織田 凛(オダ リン)は、テーブルを横切った店員さんを呼び止めてあたしの分の生ビールを追加注文してくれた。


「倒産、ね…」


苦笑いを作ってあたしの頭をこづいた。
< 2 / 206 >

この作品をシェア

pagetop