ホームレスな御曹司…!?
*“壁”と心の穴*
「ふぅーん…。失業か。それであんな状態まで飲んでたワケだ」


「ハイ…」


その夜。


あたしは明日までに乾きそうもない厚手のコートにあて布しながらアイロンがけ。


チカブミさんはベッドの上でビールを飲みながら、あたしの身の上話を聞いてくれていた。


昨夜の失態をおもいっきり見せたばかり、今更取り繕う事なく、あたしはペラペラと元社長に対する憤りや、これから先の職探しの不安なんかをチカブミさんにぶつけていた。


「なるほどな。わかる気がするな、その焦り」


「ん…。そうなんですよ、ね…。行き着く先は、やっぱり焦りで。無理言って上京、美大出させてもらって仕事のクチも見つかって、上手くやってるだろうと思ってる両親に心配もかけたくないし…。23にもなって仕送りを頼むワケにもいかないから、やっぱり、お家賃の安いアパート見つけて、職探ししながらしばらくはバイト生活ですよ、ね…」


「諦めないんだ?」


「…え?」


「自立を諦めないんだな?」


「…ってゆーか、限界を決めつけたくない…みたいな」


「うん」


「まだ…まだ自分の手で探せる“何か”があるんじゃないかと思うんです。それが何なのか、今は見えないけど…」


「見えない“何か”か…」


「ハイ…。何なんでしょうね…」
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