ホームレスな御曹司…!?
「は、早く言ってくださいっ」


「ハハッ。知香って、思考不器用なんだな」


「笑えませんっ!」


「…プッ。知香って真っ直ぐすぎる天然娘だな」


「あたしは歪んだしっかり娘ですっ」


「しっかりさんが酒に呑まれて路上で寝るかね?」


「もういいですっ!ベッド、どうぞ。あたしはここで寝かせてもらいますから!」


「いや、いいよ。床っつーか地べたには慣れてるし。オレが床で寝るよ」


「えっ…!あっ…!ひゃぁっ!」


ベッドから降りたチカブミさんは軽々とあたしをお姫様抱っこ…!?


思わず触れた前髪同士に茶色がかった瞳を直視できず、ぎゅっと目をつむった。


「何?知香。それって、おねだり?」


「えっ!?」


「ホームレスさんのおやすみのキス、ねだってんの?」


「ね、ね、ねだってませんっ!!」


「時々強情、所によりかわいいんだな?」


「かっ…かわっ…!」


「明日、二晩泊めてくれたお礼がてら、出掛けよう。おやすみ、知香」


静かに降ろされたベッドで、あたしはおやすみも言わずに頭から布団をかぶった。
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