ホームレスな御曹司…!?
なぜ“ココ”にいるの?


なぜ何もない生活を選んだの?


なぜ…捨ててしまったの?


聞きたいのに聞けないのは、きっと…これ以上の隔たりを感じたくないから。


「来るな。わかったな?」


「…ハイ」


茶色がかった瞳に光る意志と命令に。


あたしはただ頷いた。


「さて、と。じゃ、次行くか」


「…次?」


「言っただろ?二晩分の礼」


「…?」


チカブミさんはまたヤスさんに声をかけると、小走りに後を追うあたしを気にする風もなく、颯爽と歩いてく。


年末で浮き足立った街に吹く北風は、さっきよりも冷たく感じて。


その冷たさでかじかむ手で、あたしはそっと目尻を拭った。


…泣いてなんか…ナイ。


ただ拒絶された見透かされた心に。


“ホームレス”と“あたし”という壁を作ってしまった自分自身に嫌気がさしただけ。


同じように生きて、同じように明日を探す、同じ人間なのに。


あたしは公園にいたあの人達に嫌悪を抱いてしまった。


薄汚いのはあの人達の身なりじゃなく、あたしの心。


隠せもごまかしもできないのは、腐ったあたしの心。
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