ホームレスな御曹司…!?
薄暗い店内に揺れる茅原さんのゆるくパーマをかけた黒髪が、背景と混ざり合う空気。


どこからか漂うムスクの香りに解けない緊張感。


うん。


これだけ気持ち張ってれば呑まれないよ、ね。


「改めて茅原 広樹、28歳をヨロシク、ね?」


「あたしの方こそ。今日は誘っていただいて、ありがとうございます」


「ね、敬語、いいよ」


「え?」


「タメで。話そ?お酒飲んでるんだしさ、そんな力入れないで楽しんでよ」


「あ…。うん…」


「お腹空いてるでしょ?最上階のレストランに注文すれば、ここで食べられるから。パスタ系なら何でもOK?」


「うん。お願いします」


茅原さんはバーテンダーにバジルとトマト系、2つのパスタをオーダーして、ロックのウィスキーを一気に飲み干した。


「仕事の後の酒って、サイコー」


そう言って笑うと覗く八重歯。


悪い人じゃ…なさそ。


警戒心はうすれて進むお酒。
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