ホームレスな御曹司…！？

「今日はこれで我慢しとくよ。だけど、もらう。知香ちゃんの気持ち、少しずつ、ね?」


そう言って八重歯を見せて笑う茅原さんに。


何も言えないあたしは。


NoじゃなくYesを取られたまま、バーを出て行く茅原さんの背中を、フワフワしたあてもなく彷徨う心で見送った。


住む世界が違う。


どっちに転んでも結ばれない。


針千本の痛みって…何?


わからない茅原さんの言葉の意味と、自分の心。


頬に残ったキスは心まで届く事はなく。


あたしはまた辿った。


あの人の。


影、を…。