ホームレスな御曹司…!?
───ドンッ!!


「ダ、ダメですっ!」


押しのけたつもりなのにしっかりと抱かれた肩は揺るがない。


「好きだよ、知香ちゃん」


あたしは強く唇を噛んだ。


この唇は…キスは…。


心に刻み込まれた人とじゃなきゃ、ダメ…!


「どうしても?」


「だって…。だって…!」


行き場のない感情が涙になって溢れ出る。


「泣いてもかわいいから、もっと攻めてみたくなっちゃうな」


───ハムッ


耳を噛まれる度上昇する体温。


「んん…!」


「その声、もっと聞かせて?」


首をなぞる唇に抜けていく体の力。


このまま…?


ううん、ダメ。


あたしと優しく触れ合うのは…この人じゃ…茅原さんじゃ、ナイ。
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