ホームレスな御曹司…!?
そう。


何もできなかった。


心も体も何一つあげられなかった震えた夜。


どうしてなのか、あの夜とこの涙の意味を。


今なら真っ直ぐに見る事ができる。


鍵をかけた引き出しの奥のあたしの心が欲しがってるのは…。


───スッ…


あたしに伸びた手は、冷たい涙を拭って。


そのまま頬をなでて、顎に触れる。


「目、閉じたらオレがもらうけど?」


「な、何をですか!?」


「つーか、オレが欲しい」


「だから、何!?」


「知香の風邪、オレがもらう」


───!?
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