ホームレスな御曹司…!?
近づいたチカブミさんの唇が触れたのは…。


あたしの…。


───クチビル


優しく頼りなく、触れたようで触れてないようで。


熱に浮かされた熱い目でチカブミさんを見ると。


今度は強く、激しく。


押し付けられる初めての唇に全身が従う。


「知香…」


囁かれたあたしの名前は風邪の熱より熱く感じて。


唇は求め合う。


「ん…」


「その声、オレの」


「あ…んっ…」


「この唇、オレの」


「チカブミ…さん…」


「知香が、ホシイ」


優しく倒された床の上で。


耳も頬も唇も、チカブミさんと同化していく。


熱くて体中に脈打つ血液。


これは風邪のせい?


胸に触れるしなやかな手に。


あたしは捧げてしまうの…?


何もかも…
< 98 / 206 >

この作品をシェア

pagetop