誠の紅桜に止まる蝶~番外編~
一さんの一日
朝いつも4時半に目が覚める。
「もう朝か。」
ゆっくりと起き上がり身支度を済ませ部屋を出る。
朝の稽古をするために道場へ向かうとすでに誰かが中にいた。
いつもこの時間に起きているのは自分だけのはずだが・・・・
一はそう思いながらそっと中を覗く。
するとそこには土方が朝稽古をしていた。
「副長。このような朝早くから稽古ですか?」
「おう。斉藤か。」
土方は一の姿に気づき素振りをしていた手を止める。
「昨夜も遅くまで仕事をされていたようですが。」
「ったくどいつもこいつも人のことをよく見てやがるな。」
そういう土方は苦笑いのような少し照れているような顔をする。
「蝶も同じことを言ったのですか?」
「な、なんでわかるんだっ!?」
このような土方を見るのは珍しい。
内心微笑ましい気持ちになりながらも平静を装う。
「副長がそのように微笑まれるのは大概蝶のことが多いですから。」
「っふ。本当によくみてやがるな。」
「どうしてそこまでがんばるのですか?」
「なんでだろうな。俺にもよくわからねえんだ。だがな、守りたいものがあるからどこまでもがんばれるんだ。」
そう言った横顔はまさに副長というよりも一人の武士だった。