誠の紅桜に止まる蝶~番外編~
「んー今日も疲れたなあ・・・」
土方さんが歩きながら肩を回す。
「そうですね。今日は一段と浪士がいましたからね。」
私たちはいま夜の巡察中です。
「それにしても今日も蝶ちゃんは綺麗に舞ってたね。」
「舞ってるわけじゃないですよ沖田さん。」
いつもこうやって私をからかう沖田さん。
しばらく歩くと枝垂桜の下に誰かが立っていた。
「誰だ?」
土方さんが低い声で尋ねる。
するとその人はこちらを振り向いた。
黒髪の綺麗な女の人だ。
だけどその頬には
光るものが見えた。
「泣いている・・・・?」
私はおもわずつぶやく。
彼女は苦しそうに瞳を揺らしながら涙を流していた。
よほど、悲しいことがあったのだろう。
私はとっさに駆け出した。
「おいっ!蝶!!」
土方さんの声を無視して女の人の元に駆け寄る。
だけど女の人の頬には涙がなかった。
「なにか?」
静かに問われて私はおもわず身じろいする。