誠の紅桜に止まる蝶~番外編~
「おいっ!てめえ蝶に何をした!!」

未来の蝶と名乗る女に肩を押された瞬間蝶は気を失った。

一向に目覚めようとしない。

「夢を見させているのよ。」

「夢?」

総司が不思議そうに聞き返す。

「そうよ。彼女が本来生きるはずだった時間を見させているの。もしも、彼女が夢の世界を望む場合は彼女の体は本来の次代へと戻るわ。」

「っくそっ!」

同じ蝶でも目の前にいる蝶は全然違う。

悲しい瞳をしている。

俺が、未来のお前にそんな顔をさせているのか?

自分の手の中にいる愛おしいものの姿を見る。

「んっ・・・・・」

微かに声が聞こえたと思うと蝶が目を覚ます。

「蝶っ!!」

「うるさいですよ土方さん・・・・」

「っ心配させるなよばかやろう!」

ぎゅうっと強く抱きしめられる。

ああ、この温かさだ。

私は土方さんのぬくもりに安心を覚えた。

「目覚めてしまったのね。」

未来の私がそっと悲しそうに微笑む。

「そのまま現代に戻ればよかったのに。そうすれば、悲しみなんて知らずにすんだのに。」

そう言ってまた見えない涙を流していた。
< 45 / 160 >

この作品をシェア

pagetop