それでも私は君が好き
私は向こうに気づかれないように
顔を伏せた。
私の馬鹿。
何で中に入らないのよ。
突っ立ってても仕方ないよ。
なのに身体は全然反応しようとしない。
「・・・でね、この前の試合で・・・」
二人の話し声が聞こえてくる。
神様!どうか気づかれませんように!
「・・・なんだよそれ。結局意味ないじゃん。」
「うわ!ひっど!眼鏡へし折るぞ!」
「はいはい。ご苦労様。」
「もう!慎ちゃんのバカヤロー」
あ・・・神崎君以外にも
慎ちゃんって呼ぶ人いるんだ。
この呼び方は
真壁君が心の底から親しい人だけの呼び方だって
美緒が言ってたっけ。
「バカはどっちだよ。」
笑いながら私の横を通りすぎる。
良かった。
気づかれなかった。
後で神様にむかってお礼言わなきゃ。
さ、早く看板片付けて私も帰らなきゃ。
無意識に振り返った。
だんだんと遠ざかって行く二人の背中を見つめる。
これでよかった。
良かったはずなのに。
何だか寂しい。
気づかれなかったことが。
何でだろう。