それでも私は君が好き
「あ、おかえり。」
「ただいま。」
「「…」」
しばらくお互い黙っていた。
里緒は下を向いたまま黙っている私を、悲しそうな目で眺めていた。
「帰ろか。」
「うん…。」
下足に履き替えて校門を出た。
とぼとぼと歩く長い長い住宅街。
一言も言葉を交わさない。
学生がよく赴く「明治商店街」を通る。
そこは何処か懐かしく、まるで異空間。
骨董品や西洋の品が売られている。
お店の雰囲気も大正や明治を意識した建物ばかり。
お洒落で小綺麗なこの通りを通るのが私は好きだ。
里緒が骨董品屋のショーウィンドウを覗いたりしている。
だが私はそれどころではなく、ただボーっとして歩いているだけ。
里緒はそんな私を追いかける。
ごめんね…一緒にゆっくり見れなくて。