小さな幸せ
今夜は君をこんな風に抱くつもりなんかなかった。


ゆっくり話ができたらいいと思った。


まあ、あわよくばって言うのが無きにしも非ずだけど。


理性を保つだけの心の余裕もあったから、

部屋に誘った時、わたわたする君が見られたら、

外食でもいいかと思っていたし。


なのに、

『嫌がる君を襲ったりしない。』


の一言ですっかり安心して、何を作ろうかなんて

はしゃいでいる無防備な姿を見てたら。


このまま、家に閉じ込めてしまいたくなる衝動にかられた。


「こんな広い部屋でひとりでお弁当食べて…

 そんなのエンジョイじゃないよ。」


俺のために涙をこぼす君は、

俺の感情さえも一緒に抱きしめてくれるようだった。


なんて素直で優しい子なんだろう。


両親の愛にめぐまれて、

大切に育てられたに違いない。






< 101 / 297 >

この作品をシェア

pagetop