小さな幸せ
掃除の時も俺の部屋には入ろうとしなかった彼女を

何とか招き入れると、

一瞬息をのんだと思ったら

また涙をためて、

俺の事を気の毒に思ってたといい、

考えが浅かったと謝ってきた。


いやいや、謝ってもらうほどの事じゃない。


確かにあの時、彼女の言葉は胸に染みた。


俺の心を癒そうとしてくれる人がいてくれたことが

嬉しくて、涙が出たんだから。



「君は今日、

 俺の心の内側に触れたんだと思うよ。」


「それは、良かったの?」


「さあ、どうかなあ、これからの君次第なんじゃない?

 このまま俺を放り出すんだとしたら、

 酷い事だろうね。人間不信になるかも?」


迷うことなく


「放り出すなんてしません。」


と言い放つ彼女、

ああ

理性を繋いだ糸が切れる音がする。










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