小さな幸せ
それはショーを見ているみたいだった。

柳の木に無数の光の点滅が瞬いていると思ったら、

ザッと来た風に舞うように光が絡み合うようにして空に撒き上がっていく。

「ほわ~~」

言葉を失っていた私は

思わず情けない声を上げてしまった…

土方さんは、

立ちつくす私の肩をポンっとたたくと、


「たぶん今年は、今日が最後の光景となるでしょう。

 切ないくらい綺麗なのは、

 こういう風に短い間しか生きられないからでしょうね。」


「刹那的。」


「そう輝く時間は一瞬。

 ホタルは命を灯して求愛してるんです。」


聞いたことがある。

ホタルは一生のほとんどは

幼虫として水の中で地味な姿で過す。


成虫でいられるのは短くて、

何も食べず

ただ、

子孫を残すために

身体を光らせ飛び回る。

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