小さな幸せ
6時、予定通りの時間に迎えに行くと、

和実が玄関からでてきた。


何かあったか?


また泣きそうな顔をしている。


「来週の月曜日。」


「え?」


「それが、最後だって決まったの。」


そうか、そういえば前に泣いた時は、

葵さんという人と別れた日だったな。



俺は彼女の頭を撫でながら、


「何年勤めたんだっけ?」


「6年」


「そっか、お疲れさまでした。」


ふふっ


「何?」


「定年迎えたお父さんみたいだね。」


「ホントだ。」


ははっと二人で笑った。


「いつか、惣さんに言います。」

「ええっまだ定年とかって~。」

「だってちょっと感動しますよ。」

「そお?」

「はい。」

少し笑顔が戻った彼女にホッとして車を出す。



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