小さな幸せ
覚君は私のオデコを突っついて、

「みんな知ってるよ。言わないだけさ。


 わっこちゃんはスルメみたいな子だから。


 すぐには判らないけど。


 ここには無くてはならない人だったと思うよ。」


スルメって他に言い方はないの?


「ホントはね、別に寿退職だから辞めるわけじゃないの。」


「えっじゃあ、この間の角田の言ったことが理由?」


「まあ、それもあるっていうか?

 もっともだなって思っちゃったら、

 ここにいるのが辛くなっちゃったんだよね。


 ずっと、わだかまってたことだったから。」


「もう辞表撤回ってのは無理なんだろ?」



「できるかもしれないけどしない。


 昨夜プロポ-ズされてね。

 彼、新しい仕事見つければいいし、

 したくなければしなくてもいいって言ってくれたの。

 だから、ゆっくり自分に合うことしようと思って。」



「ちぇ、結局、後から現れたアイツにみんな持っていかれたな。」


「この間の覚君の励ましも、凄くうれしかったし救われたんだよ。」


「鈴木先輩!!」

時間ぎりぎりの出社だろう、

角田さんが赤い顔してやってきた。

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