小さな幸せ
「浅野さん。どうしてこんなことしたか判らないけど弟さんに会います。」

そう言い放って、

腑に落ちない俺を残し二人は、弟とやらの部屋に行ってしまった。


何なんだ、浅野というやつが、事情を話してはいたが

でも、和実これはないぞ。


弟と二人きりにしてやってくれと頼む浅野。


そんな願いを聞く義理などない。


でも、

『待っててくれませんか?』 

そういう彼女の顔を信じて待つしかなかった。


ドアの外には、声が漏れ聞こえて

二人のやりとりが想像される。


う、

手を握られてる

今、抱きしめられた。


それ以上は触るな~~


押さえられず飛び込もうとする

俺を、


「もう少し待ってやって下さい。」


と、浅野に止められる。


小一時間立っただろうか、

ドアのノブがカチャリと動く気配がして、

俺達は飛び込んだ。


顔を紅く染め驚いた和実がドアの傍で立っていて、

浅野は弟の元へと走り寄った。


彼女はその様子を満足そうに見つめ、


「お待たせしてすみません。」

と微笑んだ。



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