小さな幸せ
のっこの後から、もう一人男性が現れた。

ロングヘア-をサラッと肩のあたりまで伸ばした、

満面の笑みをたたえた人。


「わっこちゃん、久しぶり。

 わあ、相変わらず可愛いね。」


目をぱちくりしてから、

思い当たった人が一人。


「武智先輩。」


サ-クルの先輩。

のっこの旦那様だ。

現在歯科医院を経営している。


「わっこに会うって言ったら、付いてきちゃった。

休診にしちゃったんだよ。」


「武智先輩すっかり大人の男性になられて…」


「いいのよ、遠慮くなく老けたって言ってやって。」


「のんたん不機嫌だなあ。

 妬いてんだろ、わっこちゃんに。」


「一度死んじゃって見る?」


物騒な痴話げんかを繰り広げる武智夫婦に圧倒されながら、

昔話に花を咲かせる。


惣はニコニコと私の昔の様子を時々、

質問や相槌を入れながら聞き入っていた。



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