小さな幸せ
「紹介するわ、私の旦那様

 早見一光(はやみいっこう)このレストランのオ-ナ-シェフ。」


「はじめまして、早見と申します。

 お噂はかねがね伺ってますよ。

 最近は、他のシェフに任せっきりなので

 久々に腕をふるいました。

 お口に合えばいいのですが。」


にっこり笑った早見さんは、

40代の大人の人で、

仕草もスマ-トでとにかく筋張った器用そうな手がステキ。


あの手から料理が紡ぎだされるかと想像すると

おもわずうっとりしてしまう。

(和実、何呆けてるの挨拶!!)


そうに横から突っつかれて我に帰る。


「あ、はじめまして鈴木和実です。隣は、婚約者の、」


「土方惣です。今日はお招きいただきましてありがとうございます。」


さすが惣、卒がない。

それに比べて私はしどろもどろで情けないなあ。



セリがサ-ブしてくれる料理、

どれも素晴らしくて

私達は幸せな時間を過ごした。


「食事ってやっぱり至福ですよね。」


私が思わず出した言葉を早見さんは拾ってくれ


「そうですね、食事にいらしてくれる方皆さんが、

 幸せ感じて下さるように

 料理を作っています。

 『おいしかった。』その一言が私たち料理を作る人間の勲章ですから。」



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