小さな幸せ
円(まどか)と担任の高田幸雄(ゆきお)は、

いつもこんな不毛な会話をしていた。


高校生と漫画家の二足のわらじを履きながら

それを両立することを条件に漫画を描く事を許されている。

父は名家の嫡男で、不動産業の傍ら県会議員をして多忙を極めていた。

母は良妻賢母を絵に描いたような人で、しつけに厳しい人。

円は家ではいい子を装い、猛勉強をし、

学校で作品作りをする、ある意味逆転生活をしているのだ。

描く場所を持てない円にとって

月刊誌一本のペ-スで作品を描くのは

今の円にとってもう、精一杯で、

編集から、週刊誌への移動を言われた時には卒倒しそうだった。


もうこれ以上二重生活はできない。

たまりにたまったストレスに、すでに円の体は悲鳴を上げていた。






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