小さな幸せ
惣は、母の、思い出に浸りながら父の遺影を見つめている様子を

ぼんやり見つめながら、

桜花の事を考えていた。




桜花は毎朝、郵便局の前で待っていた。


俺の姿を見つけると、嬉しそうに笑っておはようと言う。


小学校から続く毎日の風景だった。


そこに今俺の姿はない。


あの朝、やっぱり桜花は俺を待っていたのだろうか。

何も言わずに去ってしまった俺を。


明日レタ-セットを買いに行こう。

手紙を書きたい、父さんのように、

恋しい人に、想いと謝罪と云い訳を、



「君が好きです。」







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