小さな幸せ
ウエディングドレス姿の桜花は幸せそうで、

由貴もちょっと照れ臭そうであり、

桜花をいたわっている感じが伝わってきた。

隣の席の長谷田が、

話しかけるまで俺は心から祝福していた。


「高田君て、土方って変わったんだね?」


「ああ、オヤジ死んじゃったからね。」


「あたし、桜花から聞いたことあるんだけど、

 大学の時、

 土方って人にしつこく言い寄られて

 付きあった時期があったって。

 まさか高田君じゃないよね?」


「は?」


「まさかね~桜花は前、高田君の事好きだったし、

 そんないい方するなんて変だし、

 でも土方って珍しい名字よね。

 それに元カレ呼んだりしないだろうし。


 ま、結婚したんだから結局元さやだってことだものね。」


「長谷田、お前、そういうの結婚式で言う話じゃないぞ。」


「そ、そうよね。気を付ける。」


俺はさっきの話が頭の中で回って、

俺って言い寄ってたの?

付き合ってないし、

でも、身体の関係はあったからな


長谷田は俺に言われたことで気まずくて、ずっと押し黙った。


嫌な雰囲気のまま披露宴は過ぎて行った。





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