赤い狼と黒い兎Ⅱ
『そんなもん、いねぇよ…』
独り言のように呟いたつもりが、亜稀羅には聞こえていた。
「いないって…?」
『…潰れたんだよ、見回り隊は。だから野放しなんだろ』
「これ…結構キツイんじゃねぇ?」
「まぁ…ちょっと思うけど」
あたしは舌打ちをしてポケットからタバコを取り出した。
『弱気になってんじゃねぇよ』
「馨…」
『天下の狼月が弱音吐くな。俺らは俺らでやれるだけの範囲をやるんだ。キツイもクソもねぇ…』
息を吐くと紫煙が上へ登っていく。