赤い狼と黒い兎Ⅱ
―――無言が、イチバン苦しかった。
今まで沈黙なんて苦に思った事なかったのに。
今はなんでか…苦じゃないハズの無言が、あたしには辛い――…。
「………なぁ、馨」
『!…うん?』
唯兎に名前を呼ばれただけなのに、それだけでビクッとしてしまった。
…なんだろう…。どうしたんだろう、あたし……。
「―――…それで、怪我してねぇ?」
『…………へっ?』
言われた言葉に、拍子抜けして唯兎を見上げた。
唯兎の顔には笑みが浮かんでいて…。
あたしはそれを不思議に見つめるしかなかった。