赤い狼と黒い兎Ⅱ
てか、作業服ない…。
「馨サ~ン」
『おわっ』
急に頭に腕が乗っかった。つーかあたしは肘置きかっ。
『なんすか…唯サン』
犯人なんて1人しか居ないしね。亜稀羅は向こうで電話してるしね。
てか亜稀羅は抱きついてくる人だからまず無いんだけどね。
「突発的過ぎやしないか?」
『そう?あたしらなんてこんなもんだよ』
「まったく…。お前には驚かされてばっかだよ」
『たまにはねと思って』
「あーそうですか」
『ハイハイ。てか服貸してくんない?』
「服?」
『つなぎがいいな。バイクいじるからさ。あと軍手と』
見上げるようにして言うと何故かジッと見つめてくる唯サン。
……なんだ?
「俺のでいいわけ?」
『は?何故?』
「…いや。別に。2階行くか」
『うん』
何がなんだかサッパリだけどまぁいーや。
「馨」
『ん?』
亜稀羅に呼ばれて振り返れば、少し髪色が明るくなった涼がいた。
わざわざ迎えに行ってくれたのか亜稀羅。さすがあたしの弟。
『おー。』
「…ダレ?」
若干声が低くなった唯サンに苦笑いしつつも答えた。
『知り合い。“喰”に居たのを拾った』
「……え?は?何?」
『別に犯罪してないから大丈夫だし。てかまだ中坊』
「はっ?マジかよ…見えねぇなぁ」
『だろー?将来有望よ、アイツ』
一応ね。もう少し鍛えたらいいもんになるよ。喧嘩のスタイルも悪くないし。