赤い狼と黒い兎Ⅱ
『あ、そう…』
「そう。」
ニコニコニコニコと笑って、なんだか不思議な奴だ。
……まぁ、そんな不思議でバカな奴を好きになったのは紛れもないあたしなんだけど。
「はい、これなら馨にちょうどいいかも?」
そう言って渡してきたのは、動きやすそうな黒のつなぎ。
『あ、これあたし欲しかったやつ…』
「そーなの?あげようか?」
『へ!?いや、いいよ!』
「いいよ。俺結構つなぎ持ってるし。それちっさいから」
『………じゃあ、お言葉に甘えて頂きます』
「どうぞ」
……ひさびさに調子狂うぜ…。
「じゃ、外出てますねー」
『んー……唯』
「何?」
ドアノブに手を掛けたまま振り向いた唯に、ちょっと俯きながら言った。
『ありがとう……』
あたしからしたらこれは最大級の感謝の気持ち。
…滅多に言わないから、たまに言うと心配されるんだよね。メンバーとか兄貴とか。