赤い狼と黒い兎Ⅱ
驚かれるかなー。なんて思ったのも束の間。何かにギュッと抱き締められた。
『!?!?』
驚き過ぎて声が出ない。否…一瞬心臓が止まった気がした…。
ドアの近くに居たはずの唯兎が、いつの間にかあたしを抱き締めていた。…ぬいぐるみの如く。
「何だよ急にー」
言動が違いすぎる…。
だって絶対笑ってる!顔見えないから分かんないけど、笑ってる気がする。
『…唯』
「あんま可愛い事言うと、このまま襲うよ?」
体を離して、ニコッと笑うその笑顔が本気すぎてこれ以上何かを言うのはやめた。
…自分の身のために。
「それとー」
……それと?
「最近、てか前からだけど」
『…?』
上に向いていた視線をあたしに戻して、今度はニンマリと笑った。
………え?
「馨、亜稀羅とひまに抱きつかれすぎ」
『いや…何て言うか…』
もう、あれは癖の領域だ。まぁ…可愛いから放置してるってのもあるけど……。