赤い狼と黒い兎Ⅱ
貸してもらった鍵を差し込んで、ハンドルを握って思い切り吹かした。
―――ドゥルンドゥルンッ!
お、いい音。さすがZⅡ。エンジンとマフラー弄っただけでこんな音変わるか。
「す……」
「「すげぇ!!」」
倉庫は瞬く間に興奮に包まれた。
はしゃぎすぎ。ZⅡは元がいいからなー弄り様によってはこんな感じになる。
「最初と全然音ちげぇじゃん!」
「良かったな!」
「やべぇ、めっちゃ嬉しい!ありがとうございます馨さん!!」
キラキラな笑顔を見せられて、あたしも笑顔で『どういたしまして』と返した。
「馨って…」
「「そんなテク持ってたっけ?」」
不思議そうに見つめるmoonのメンバーに、あたしは首を傾げた。
『何が?』
「いや、そんな細かくやる人だっけ?」
『何それ。いつもあたしが細かくないって言いたいのかい?お前は』
「いやいやいやいや!!違います!!」
『お前のバイク夜な夜な一つずつパーツ取ってあたしのに付け加えといてやる』
「やめてぇええ!馨が言うと本気にしかきこえないからっ!!」
『あたしはいつでも本気』
軍手を外しながら、立ち上がった。
煙草吸いに外でも出るかなー。そう思ってシャッターの前まで来た、はいいが…。
『(なーんか、嫌な予感が……)』
当たらないで欲しい。…という願いは見事に打ち砕かれた。