赤い狼と黒い兎Ⅱ
ていうか、この状況を見られたら一番ヤバいのは絶対亜稀羅だろうに…。
起きてなきゃいいけど…。…じゃなくてこの状況なんとかしなきゃな。一応。
『退いて、唯兎』
「イヤだね」
『……』
そんな子供が駄々こねるみたいな言い方しなくとも…。
『…分かった分かった。水取りに行かないから。だから退いて?』
今までで一番優しく言ったつもりだぞ!これでも無理か?
「…ダメ。絶対分かってない。つか、適当すぎる」
『………。』
ダメか。分かってないとか…。ちゃんと分かってはいるつもりなんだけど。
あーあ。お酒の力って怖い。
「馨はこういう時いつも分かってるフリして、済まそうとするだろ?」
『…別に、そんな事は…』
ある。バリバリある。めんどくさいから、適当に流してその場で終わる事。
「ない、なんて言えねぇだろ?」
『………』
「はい、今回は馨の負け。そんなんで済まさねぇからな?」
何で分かるの?何で酔ってないの?さっきの頭痛はどこに行ったわけ?芝居なの?ワザとなの?……何がしたいの?
なんて。馬鹿げた事を思ったって意味はない。唯兎が変なところで鋭いのは前からだし、だいたい面倒くさい事は適当にやり過ごすのがあたしだしね。