赤い狼と黒い兎Ⅱ
第10章
テスト当日。久しぶりに登校した学校。クラスに入ると、みんながみんな机に向かって必死に勉強していた。
……意外と、真面目なんだなぁ…。
「そういやさぁ、馨」
『何?』
隣の席にいる向日葵が少しげっそりした顔であたしを見てきた。
郁は前の席で携帯を弄って、その隣の席にいる唯兎は寝てて、向日葵の隣にいる朔弥はパソコンを弄っている。
「俺らに勉強教えてくれるのはいいんだけど、自分の勉強はしてんの?」
『してないけど?』
「即答かよ…」
すると前の席にいた郁が振り向いて「大丈夫なのか?」と聞いてきた。
……何が?
「勉強しなくて」
『ああ…。まぁなんとかなるんじゃない?』
「なんとかって…」
「馨!ここのテスト、ナメてちゃやばいぞ!」
なぜか椅子から立ち上がって力説する向日葵に溜め息をつき、頬杖をついた。
一応、深子達の勉強を教えると同時に一通り教科書は目を通した。
だからと言って100点とれるか、と聞かれれば答えはノーだ。あたしだって勉強はそれなりにしか出来ないし、テストは嫌い。
「テストで1つでも赤点とったら進級出来ないんだぜ?」
『……向日葵、そんな事言う前にちゃんと勉強しなよ。目標、90点に上げるよ?』
「!!」
そう言うや否や顔を青ざめさせていそいそと勉強しだした。
黙ってれば…可愛いんだけどなぁ。
「は、向日葵が真面目に勉強してら」
「黙っとけ郁」
ニヤニヤと笑う郁を向日葵は睨み、またノートに視線を戻した。
「馨はいいの?勉強しなくて」
いつの間にか起きた唯があたしを見てそう聞いてきた。…ついでにでっかいアクビをこぼして。