赤い狼と黒い兎Ⅱ
『……別に』
アクビをこぼして、また腕の中に顔をうずくめる。
…早く学校終わんねぇかな…。
「別にって…」
「それじゃ会話になんねぇよ馨〜っ」
「つーか、ひま。お前人に構う前に勉強しろよ。次お前の嫌いな数学だぞ」
「……」
向日葵は唯にそう言われて、睨むも唯は知らん顔で寝る体勢に入った。
『…ひま、80点超えないと分かってるよね?』
「うっ……わかったよ」
しぶしぶといった感じで席に座る向日葵。それをおもしろおかしそうに見つめる郁。
「馨はすげぇな」
『…何が?』
「あの女嫌いな向日葵を手懐けて」
ニコニコと笑って話すから、郁から視線を逸らして向日葵を見た。
…確かに、向日葵は最初女嫌いであたしの事も毛嫌いしていた。…いや、今でも近付いて来た女には容赦無いけど。
「だああああっ!!ダメ!無理!わかんねぇ!!」
「うるせぇ、向日葵。黙って集中しろ。…あと5分しかねぇぞ?」
「唯兎〜、暇だろ?教えてくれよ〜」
涙目で唯の腕に縋り付く向日葵。けれど唯は自分でやれと言わんばかりに向日葵の腕を振り払いアクビをした。
「なんだよ、唯兎最近つめてぇぞ!」
「あ?」
「……馨〜」
…そういった点では、ちょっとはあたしの事、認めてくれたのかな。
唯兎に冷たくあしらわれて来た向日葵の頭を撫でて、小さく笑った。
『…どこが分かんない?』
「……」
するとみるみるうちに頬が真っ赤に染まる向日葵に、あたしは体を起こした。
『ひま?どした?』
「えっ、あ、いや…」
「向日葵、てめぇ…」
「ちょっ!?待っ、違う違う!!」
唯が向日葵の首根っこを掴み睨む。あたしは何がなんだかわからないから首を傾げる。
「ま、放っとけばいいよ」
『?……そ』
2人を尻目に寝る体勢に入った途端にチャイムが鳴り響き、先生が入ってきた。
……寝る暇なかった。
「そこの2人、席について」
「「チッ」」
注意された2人は大人しく席に座るも、未だに睨み合っていた…。