赤い狼と黒い兎Ⅱ
「―――…そこまで。ペン置いて、後ろから集めろ」
ダルい体を無理矢理起こし、みんなのプリントを集め先生に渡した。
「今日でテストは終わりだが、いつもの如く赤点を採った者には追試がある。それにすら合格しなけりゃ、進級は出来ないからな。覚えておけよ」
先生はそうとだけ言うと、テストの束を持って教室を出て行った。
案の定テストが終わった開放感からか“走り”という言葉が飛び交う。
『(走るのは自由だけど、それで事故ったら元も子もねぇよなぁ…)』
まぁ…止めはしねぇけどさ。
「馨!聞いて!」
するとひまが興奮した様子であたしに話し掛けてきた。
『ん?』
「俺数学結構出来たかも…!」
『おー…そっか。よかったな。頑張ってたもんな、ひま』
「馨のお陰だよ!!」
そう言って抱き着こうとするひまを唯兎が首根っこ掴んで、引き戻していた。
「うわっ!?何すんだよ唯兎!」
「うるせェ…。“俺の”馨に近付くなあほ」
わざと“俺の”部分を強調させてひまを睨む唯兎。
ひまも負けじと睨むけれど……、唯兎の本気の目力に負けたのかとことこと郁に駆け寄った。
「郁…唯兎の機嫌が悪すぎて俺にはもうどうにも出来ない」
「ほとんどお前のせいだ」
ひまはずしっと額にチョップをかまされ「痛っ」と声をもらしていた。
『…唯、あんまひまイジメちゃダメだよ』
「………チッ」
……最近ほんと、機嫌悪いなぁ…。