赤い狼と黒い兎Ⅱ
「馨ー」
教室の外から亜稀羅の声が聞こえ、カバンを持って立ち上がった。
「…また今日も調べもん?」
唯兎に不貞腐れたように聞かれて、苦笑いを浮かべ「ごめんね」と言った。
「しょうがないよ唯兎。馨には馨のやる事があんだから」
「…んでもさぁ、馨最近多いよ?まさかまた危ない事しようとしてる?」
ひまに疑いの目を向けられてますます何も言えなくなった。
別に危ない事をしようとしてるわけではない。1人こそこそと動き回る様な事でもない。
ただ……、みんなが動くにはまだまだ謎が多すぎるって事。あたしの力不足でみんなに心配をかけて申し訳ないとは思うが、今はもう少しだけ…待ってほしい。
すべてが分かるまで。
「……そうなのか?」
『…やだなぁ。みんなに内緒でやるくらいなら、あたしはみんなと距離を置くよ』
「えっ!?そんなのヤダよ!?」
『……だから、何もないってば…』
焦った様な顔であたしの手を握るひまにまた苦笑いした。
ほんとに心配症だなぁ…。
「……亜稀羅は知ってんのか?」
『…知らないよ。誰も何も知らない。今はまだ、それでいいの』
「…どういう意味だよ?」
「馨ー、早くしないと兄貴と嶽、うるさいよ」
亜稀羅にそう急かされあたしは「じゃあ、またね」とだけ言ってみんなに背を向けた。
唯兎の顔は何故だか見れなくて、足早に教室を出た。
「どうかした?」
『…ううん、何でもないよ』
廊下を歩く中、突き刺さる女子からの視線を無視して駐輪場へと向かった。