赤い狼と黒い兎Ⅱ
-唯兎 side-



倉庫に着いていつものソファーに腰をおろし、頬杖をついた。




「唯兎、どうしたんだよ。珍しく難しい顔して」

「一言余計だ」




ノートパソコン片手にクスクスと笑う朔弥。長椅子に座るとパソコンを開いた。




「まぁ、大体検討はついてるけどね」

「は?」

「馨ちゃんのことでしょ?」




ズバリと言い当てられて俺は視線を逸らした。




「馨ちゃんが何してるのか知りたいってとこだね」

「……何お前。エスパーか」

「残念ながらエスパーではないかな。…でも合ってるでしょ」




チッ、と小さく舌打ちをこぼして溜め息をついた。


馨は元から自分のことを話すような奴じゃないことは知ってる。


―――…いや、亜稀羅には何でも話すか。


俺じゃ頼りねぇってか?俺じゃ、馨の右腕にはなれねぇのかな…。




「……馨ちゃんさ」

「…あ?」




考えることを止めて、朔弥の方を見ればパソコンをカタカタとやっていた。




「もしかしたら、あの嶽さんって人のこと調べてるのかもね」

「……は?どういう事だよ?あの人はもう族でも何でもねぇし、釈放された身の人だろ」




訝しげに朔弥を見れば「うん」と頷いてから、眼鏡のブリッジを人差し指で上げた。



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