赤い狼と黒い兎Ⅱ



何がなんだかわからないけれど、みんなが驚いた顔をしているから大事な話でもしているのかと思ってそう聞いた。


なのにみんな何も言わなくて、亜稀羅は嬉しそうな顔を浮かべて抱きついて来るからもっと訳がわからなくなった。




「馨!どうしたの?」

『え?あ、息抜きに来ただけなんだけど…』




下にはmoonのメンバーもいるし。そう言えばやっとみんながちゃんと動き出した。




「息抜き、だって必要だよなそりゃ!」

「家に籠もってちゃつまんないもんねっ」




そう言って向日葵も抱きついてきて…、亜稀羅はなんでか向日葵を睨んでるし…。


はぁ、と小さく溜め息をついて亜稀羅の頭に手を置いた。




『亜稀羅、またなんか言ったの?』

「また!?…なんか人聞き悪いね馨。俺なんも知らないよ?」

『違うくて。みんなに変なこと言ったんじゃないの?』




よしよし、と頭を撫でれば亜稀羅は首を傾げて「特に何も」と言った。


……まぁ、何でもいいんだけどさ。




「で、そっちは?息抜きするくらい余裕出来たって事?」




亜稀羅にそう聞かれて、今度はあたしが首を傾げる番だった。




『余裕出来てないけど?』

「「は……?」」




亜稀羅と向日葵がハモって、あたしをガン見してくるから「えっ?」という顔をしている。


いや…え?あたし、息抜きするほど余裕は無いよ?けど、たまには顔を見せに来なきゃ暴れる人居るかなぁって思って来たんだけど…。




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