赤い狼と黒い兎Ⅱ
「え、じゃあ何で来たの?」
龍希が真顔でそんな事言ってくるから、眉間にシワを寄せて舌打ちをこぼした。
『じゃあ、いいよ。帰るから失礼しましたね』
半ばキレ気味に言えば、向日葵と亜稀羅に行く手を阻まれて動けなくなる。
「おい、龍希!余計な事言ってんじゃねぇよ!」
「用事無くても来ていいだろ」
『いいんだよ、2人とも。龍希はあたしにいて欲しくないらしいから』
語尾を強調して言うと、龍希は焦ったように立ち上がって「そんな事言ってねぇだろ!?」とあたふたしていた。
「じゃなくて、俺が言いたいのは…忙しいのに何でわざわざ来たんだって話だよ」
ちょっと不貞腐れたように言ってから、ドスンとソファーに座り直した龍希。
「ああ、確かに。調べ物は終わったの?馨ちゃん」
『………』
にこやかに朔弥に声をかけられたけど…。朔弥さん、目が笑ってません…。
ピクピクと頬を引き攣らせて笑った。
あー、やっぱ怒ってるよねー。朱雀の情報ちょっと勝手に拝借しちゃったもんねー。あー、朔弥さんの顔が怖いよー。
笑ってんのに笑ってねぇ…。マジ怖い。