赤い狼と黒い兎Ⅱ
「無いって…何が?」
『ん?アルバムだよ、アルバム。亜稀羅、場所知らない?』
「えっ?あのアルバムって保管庫じゃないの?」
『それが無いから探してんだよねー…』
じゃなきゃここまで苦労はしない。あたしだって保管庫の場所は覚えてる。
でもそこにあるハズの物が無い。明らかにこれは不自然じゃん。
「……あれって持ち出しオッケーだっけ?」
『いや、持ち出し禁止』
「先代の女が持ってったとかは?」
『歴代彼女入れ込んでないの知ってるだろ』
「ああ、そうか」
亜稀羅と春架と頭を捻るも出てくる答えは全てノー。
唯兎達は多分、アルバムの存在自体を知らないから聞いても無駄。
「その…アルバムって大事なの?」
不思議そうな顔をした向日葵がそう聞いてくるから「うん」と頷いた。
「馨、顔覚えてないの?」
『…覚えてたらアルバムなんて探さないって』
「あー、それもそうかー」
「てか、朱雀にアルバムとかあったんだな」
龍希が面白可笑しそうに言うから、あたしも小さく笑った。