赤い狼と黒い兎Ⅱ



「巡回、行こっか」




腕を掴まれて半ば無理矢理立たされ、部屋から出される。


あたし達の後を少し遅れてついてくる春架たち。




「馨、大丈夫?」

『…え?』




顔だけをこっちへ向けて眉をハの字にしている亜稀羅。


なんの事だかわからないあたしは首を傾げる。




「目、笑ってなかった」




そう言われてあたしは目を見開いた。


自分では笑っているつもりでいたのに、ちゃんと笑えてなかったのか…。




「馨、無理しないでね…。思ってる事はみんな同じだから」




朱雀の倉庫を出た時、後ろにいた春架にそう言われて深子と磨子に抱きつかれた。




『―――大丈夫だよ。もうすぐ、終わるから』




深子と磨子に抱きつかれたまま、空を見上げた。空はどんよりと曇っていて、今にも雨が降り出しそうだった。



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