赤い狼と黒い兎Ⅱ




「…ふふ。やっぱり馨の“眼”は綺麗だね」

『……』




あたしの右目は嶽にやられて視えなくなって、色も失くなった。なのに琳はこんな眼を綺麗だといつも言う。




『琳、』

「そろそろ時間だね?」




あたしが反論しようとすると、こうやってすぐ話を逸らす。


……ずるい奴。




「不満そうな顔〜!」

『……並べ、琳』




チッ、と舌打ちしてから低くそう言えば琳は笑いながら「またねー」なんて言って階段を降りて行った。




「…チッ、アイツやっぱムカつく!」

『……ひま』




今度は向日葵に抱きつかれて、出かかった溜め息を飲み込んだ。



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