赤い狼と黒い兎Ⅱ
―――ブォンブォン!
バイクのマフラーを吹かせて、倉庫のシャッターを開ける。
未だに大粒の雨が降りしきる。雨の日は視界が悪いから嫌いだ…。しかもあたしは左眼しか視えていない。イコール、視界が狭い。
「てめぇら!雨でコケんじゃねぇぞ!」
「こんな日にコケるなんて大っ恥だな」
返事の代わりにマフラーの音が轟く。準備は整った。後は…乱鬼のところへ出向くだけ。
『…行くぞ』
ブォンッ!!!―――
マフラーを思い切り吹かせ、バイクを発進させた。冷たい雨が体を濡らしていくのも気にせず、ただ前だけを見つめる。
なぜ乱鬼が全国No.3にまで上り詰めたのか。確かに実力もあるけれど、乱鬼の後ろ盾に組がついているのが大きい。
裏で汚い事をやって、上をことごとく潰していった。現に、moonのメンバーが徐々にやられたのが何よりの証拠だ。
そんな族を善良だとは言えない。裏でやっている事を隠して今までやって来た。…そろそろ片付けるのが妥当だろう。
ちらっとサイドミラーで後ろを見れば、みんな一定の距離を保ってあたしに着いてきていた。