赤い狼と黒い兎Ⅱ




『……お前も、逃げられねぇからな』




山崎かすみは下げていた顔をあたしに向けて、睨んできた。


怒りと憎悪の籠った目を…。




「…んたの…っ」

『あ?』




握り拳を震わせて、小さな声で呟いた女。




「…全部全部、アンタのせいよッ!!」




そう悲鳴に近い声を荒らげた女。あたしはワケが分からず怪訝な顔をした。


……あたしのせいって、何。




「アタシの欲しいモノ全部奪ってッ!偽善者ぶって何がしたいワケ!?」

『………』




偽善者ぶって、ていうのは自分でもわかってるけど…。あたしがこの女の欲しいモノ?を奪ってる記憶はないんだけれど……。


被害妄想はやめてくれ。




「聞いたわよ。アンタ…瑠衣が庇って守った子だって」

『!』



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