赤い狼と黒い兎Ⅱ
―――ガシッ
「うぁ……っ」
女が小さく呻き声を出し、あたしの顔と手を交互に見た。
『悪いけど…、女は殴れないタチなんでね』
ははっ、と軽く笑い飛ばし右手にもっと力を込めた。
…ポタポタと…血が落ちる。
あたしの左手は女の首元にある。女は顔を青ざめさせたままぐっと口を噤む。
『…これを望んでたんだろ?』
「あ……やっ…」
違う、と言うように首を横に振る女。けれどあたしが首を軽く持っているから、なかなか動かせれない。
『…あたしを恨んでたんだろ?殺るならコッチやんねぇとな…?』
掴んでいるナイフを胸元に持っていくと、女が手を引こうと後退る。