赤い狼と黒い兎Ⅱ




『あのさ、』




未だに泣き止まない女に、あたしは溜め息混じりにそう切り出した。




『人をすきになるのって案外簡単じゃん?でもさ、相手にその気持ちを伝える時って…結構障害ってのがたくさんあると思う』




実際、あたしが難しい恋愛してきたワケじゃないから偉そうな事言えないけど。




『だけど、それを伝えようって思うか…そうじゃないかは本人次第なワケで。何も伝えてないのに“あたしをすきになってくれない”とか“あたしのものにならない”とかって、それは違うと思うよ?』

「……っ」




女は何も言わず、あたしの目をじっと見つめていた。




『言葉って、相手に自分の思ってる事を伝えるためにあるものでしょ?それなのに“伝わらない”はおかしい』




あたしはぽんっと女の頭に手を置いて、緩く撫でた。



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