赤い狼と黒い兎Ⅱ
『……もう、いいよな?全部終わったんだから』
声を低くしてそう言うと、野田は「ああ」と頷いて言った。
《はい。もう全て終わったのでよろしいですよ。この数ヶ月間、ありがとうございました》
『……チッ』
ブチッと一方的に電話を切り、溜め息をついた。
野田に任せていたのは乱鬼と繋がりのあった組。あっちもあっちで長引いたらしく、野田の後ろではバタバタとしていた。
あたしはこの乱鬼を解散させたら、手伝いはもう終わりにしてほしいとお願いしていた。
…だから、こんな事も今日でおしまい。
「馨」
携帯をじっと見つめていたら、いつの間にか唯兎があたしの側に来ていた。
「手、大丈夫か?」
『手…?……ああ、うん。大丈夫』
一瞬何のこと言ってるのかわからなくて目が点になったけど、自分の右手を思い出した。
…だめだなぁ。怪我することに慣れてすっかり忘れてた。