赤い狼と黒い兎Ⅱ



ガバッと瑠宇に抱きしめられ、ミネラルウォーターを落としそうになった。


……あぶない。




「だいぶ深く切れてたんじゃねぇのか!?唯兎がハンドル握る時痛そうだったって聞いたけど…」

『!』




ハンドル握る時痛そうだった……?何で知って…。


あの時近くに居たのは亜稀羅だけだったはずだけど……。




「無理すんなよ?ほんとは痛いんだろ?」

『……別に、慣れてるし』

「あー、そういうとこほんと可愛くねぇな?素直に“痛い”って言っときゃいいのによ」

『…っるさいな。お前に言われたくない』




ぐしゃぐしゃと頭を撫でてくる嶽の手を払い除け、キッと睨み付けた。


嶽は「おーコワイコワイ」と言ってソファーに座って煙草に火をつけた。




「とりあえず、手が先。唯兎救急箱持ってきて」

「はい」



< 331 / 360 >

この作品をシェア

pagetop