赤い狼と黒い兎Ⅱ
ガバッと瑠宇に抱きしめられ、ミネラルウォーターを落としそうになった。
……あぶない。
「だいぶ深く切れてたんじゃねぇのか!?唯兎がハンドル握る時痛そうだったって聞いたけど…」
『!』
ハンドル握る時痛そうだった……?何で知って…。
あの時近くに居たのは亜稀羅だけだったはずだけど……。
「無理すんなよ?ほんとは痛いんだろ?」
『……別に、慣れてるし』
「あー、そういうとこほんと可愛くねぇな?素直に“痛い”って言っときゃいいのによ」
『…っるさいな。お前に言われたくない』
ぐしゃぐしゃと頭を撫でてくる嶽の手を払い除け、キッと睨み付けた。
嶽は「おーコワイコワイ」と言ってソファーに座って煙草に火をつけた。
「とりあえず、手が先。唯兎救急箱持ってきて」
「はい」