赤い狼と黒い兎Ⅱ
「ははっ、馨の前では大人しいんだ。尻に敷かれるタイプだな」
「〜〜っるせぇっ!」
そう叫んで缶ビールを引っ掴むと、どこかへ行ってしまった。
あー…怒った?
「んふふ、いじりすぎた?」
「かもなー。あいつ、馨のことになるとすぐ照れてどっか行くし」
愛されてんね、と笑う郁にあたしは苦笑いをした。
怒らすのは良いけど、その後慰めるあたしは割りと大変なんだから…。
「みんなの馨から、唯兎の馨になっちゃったね」
『……』
「ま、怒った唯兎を慰められるのはただ1人」
「そういう時は馨が行くのが一番だよ」
『……行ってくる』
まぁ、こうなることはわかってたけどね。
「「行ってらっしゃーい」」
後ろで楽しそうな声を聞きながら倉庫を出た。
……あいつら絶対楽しんでる。