赤い狼と黒い兎Ⅱ
「馨さ、」
『ん?』
「ほんとにmoon辞めるの?」
海から目線を外してあたしをじっと見つめる唯兎に、あたしは目をぱちくりとさせた。
『えっと……うん、辞めるよ』
「いいの?」
『いいのっていうか…。そういう約束だからねー…』
あはは、と苦笑いをこぼして右手に顔を乗せた。
「約束?」
『そー…。あの大きい抗争が終わったら、辞めるっていう約束』
「だれと?」
『秘密』
にこっと笑って唯兎から視線を外す。
―――…湖雨との約束だから。っていうかあたしが勝手に突き付けた約束だけど。
wolf moonは、もう湖雨に任せることをちゃんと伝えた。